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2005年04月30日

まっくすは〜と♪ (7)

 二つのマーブルスクリューがぶつかり合い、お互いを押し戻そうとしていた。しっかりと片手を前に突き出し、歯を食いしばって相手からの圧力に耐えるビリキュア達。その均衡は、即ち二組のビリキュアのオーラ能力の均衡であった。


「緒耶美ちゃん、苦しいかもしれないけど頑張るにゃ!」
「がおっ。私達の力はこの位じゃありません!」
「くっ、思ったよりやるね、かわねこちゃん達」
「ああ、予想以上だな。だけど!」

 お互いが放った必殺技が均衡している中、少しでも相手側に押し戻そうとオーラを集中する四人。ブラックとホワイトが互いに繋いでいる手にも力が入る。ここから先は純粋に気力の勝負となる。幸いひと気のないブロックなので、集中するためには好都合であった。ただ、相手の必殺技を押し返すという一点だけに集中するのだ。

「あなた達、何やってるの!?」

 だが、一人の声がそこに割って入る。誰あろう、れも副司令その人であった。近くのブロックでの作業の指揮を終えた後、技術部の要請で別のブロックへ行く途中に、たまたま通りかかったのであった。

 オーラを集中しなくてはならないこの場面で気を逸らすのは自殺行為と言ってもよい。もちろん偽ブラックと偽ホワイト、緒耶美は集中を乱さなかったのだが、かわねこだけが違った。普段の叱咤に対する反応か、つい、れもの声に反応してしまったのである。もはや反射的とも言っていいレベルだろう。

「にゃ、れも君?」
「ご、ご主人様ぁ!!」
「しまったにゃ!」

 その反応が致命的な結果を招いてしまった。自分たちのマーブルスクリューが相手のマーブルスクリューを押さえているということは、一瞬でも気を抜くと均衡が崩れてしまうという事になる。当然その隙を見逃す偽ビリキュアではなかった。気力を振り絞り、オーラを一気に注ぎ込む。

「うにゃぁぁぁぁ」
「きゃぁぁぁぁぁ」

 相手のマーブルスクリューに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる かわねこと緒耶美。ある程度相殺されているとはいえ、必殺技だけにそれなりの威力がある。衝撃でビリキュア装備が解かれてしまい、変身アイテムがポーチから放り出される位の威力はまだ残っているのであった。

「司令代理! 緒耶美ちゃん!」
「れも君、来ちゃだめにゃ!」
「安全なところに隠れていてください!」

 慌てて、変身の解けたかわねこと緒耶美に駆け寄る れも。なぜビリキュア同士が戦っているのかという経緯は解らないが、確実に解ることは、生身の状態の かわねこと緒耶美はただの少女に過ぎないこと。緒耶美の方は生来の力が強いと言うこともあるが、相手はビリキュア装備。十分なオーラ防御力が無い限り、挑むのは無謀という物だ。

「これでビリキュアには変身できないな」
「だね」

 自分たちの方に放り出された携帯電話型変身アイテムを足でしっかりと踏みつける偽ビリキュアの二人。内心、やっていることは悪役だと思っているのだが、新アイテムをかわねこと緒耶美に使わせる為と、無理矢理自分を納得させている。当然、そんな友情の板挟みな葛藤は かわねこと緒耶美が知る由もない。

「ああっ、変身アイテムが」
「卑怯にゃ……これじゃビリキュアになれないにゃ」

 半ば悔しそうに偽ビリキュアを見上げる かわねこと緒耶美。偽ホワイトの言うとおり、変身アイテムが手元にない以上、ビリキュアに変身することは出来ない。そうなると、ビリキュア装備を身につけた相手の攻撃から、自分たち二人の身が守れない。それは当然として、問題はれもだ。れもを守ることなど無理に等しい。

「万事休すかにゃ。れも君一人守れずに……」
「そういえば……司令代理のご主人様に何かあったら次は副司令が狙われる番だと。果穂さんが昨日言ってました」
「れも君があの二人に襲われたら、ひとたまりもないにゃ」
「なぜですか? 副司令だっていつもオーラハリセンをご主人様に使ってますよね」
「ボクだからだにゃ。ボク以外へのオーラ能力は攻撃も防御もほとんど無いのにゃ」
「そんな……」

 緒耶美が昨日果穂から聞いた話を披露すと、それに納得するかわねこ。れもはフェイザーやフェイザーブレードによる白兵戦の場合ならば、情報部にいた頃の訓練とも合わせて、かなりの対応が出来るはずだ。だが、オーラ装備の相手と対峙した場合にはどうだろうか。かわねこのいう通り、かわねこに対するオーラハリセン攻撃には秀でているものの、それ以外の相手に対しては皆無に等しい。

「れも君までターゲットに入れるとはにゃ。確かにTS9を制圧するには正しいストーリーだにゃ……」
「許せませんよね」

 かわねこと緒耶美が拳に力を込めながら、偽ビリキュアへの怒りを新たにする。それを見ていた当の偽ビリキュアの二人は、戸惑いの表情を隠すことなく顔を見合わせながら小声で囁きあう。

(なぁ、ブラック。俺達ひどい言われ様だと思わないか?)
(仕方ないよ、やってること悪役っぽいし)
(否定できないな……)
(でも、こうでもしないとアイテム使ってくれないんでしょ?)
(だけどなぁ。あいつも二人に何吹き込んだんだか)

 そんな二人の様子には気にもとめず、れもを偽ビリキュアから庇うように立ち上がる かわねこ。ニセ者を睨み付ける様な視線からは、TS9を守るという大きな使命感と、れもを守るという小さな、しかし何物にも代え難い使命感が見て取れるのであった。

「変身できなくても、れも君だけでも……」
「ご主人様、これ……」
「にゃ?」

 小さな拳を握り締つつ、ある種悲壮な覚悟をするかわねこに、緒耶美がポーチを手渡す。果穂からもらったポーチ。その中にあるものは確か……

「果穂ちゃんの……そうかにゃ。まだ手はあるのにゃ」
「はいっ、まだ私達には戦う力があるんです!」

 緒耶美の言葉にうなづき、ポーチの中身を取り出すかわねこ。緒耶美もそれに習う。二人が手にしたのは新しい変身アイテムだった。しっかりと握り締め、決意も新たに偽ビリキュアに立ち向かう。

「れも君はボクが守るにゃ。マージ・マジ・マジーにゃ!」
「ご主人様、それ違うと思います……」
「冗談にゃ。使い方は果穂ちゃんから教わってるのにゃ」

 今回のアイテムはターンタイプ。その表面に手のひらを変身アイテムにかざす二人。どうやら手のひら静脈認証の機能が備わっているらしい。二人は手を握り合い、声も高らかに叫ぶ。

「「デュアルオーロラウエーブ!!」」

 ビリキュア装備を身につけるためのキーワード。その叫びに応えて、オーラ増幅衣が転送装着されていく。見る人が見れば若干デザインが変わったのがわかるのだが、全体的なイメージは変わっていない。ただ、かわねこの風邪対策でブラックのヘソ出しが無くなっただけだ。

「セキュア・ブラック!」
「セキュア・ホワイト!」
「「ふたりはビリキュア」」
「名前を騙りしニセ者達よ!」
「とっととおうちに帰りなさいだにゃ!」

 名乗りを上げて、びしっと偽ビリキュアを指さす かわねこと緒耶美。自分たち自身でも、今まで以上にオーラの力がわき上がっているのがわかる。これならば目の前のニセ者達に負ける事などない。そんな気持ちもわき上がっているのだった。

投稿者 かわねぎ : 2005年04月30日 01:20

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